藤花一拝乙夜覧

藤花みのりちゃんコレクションの本を語るこーなー

#009 空えぐみ『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』

あっつーい...暑くて干からびそう…

 

 

今年は本当に暑くて、もう日中ほとんど外に出たくありません。生まれはそこそこ南国の方なんですが、身体が外に出ることを拒絶します。高温高湿度、日本の夏は知的活動には向きませんね~と、外山滋比古先生も本でおっしゃっていたのを思い出します。湿度が高いと保存している書籍も傷まないか心配です。はやく大きな書架を作りたい...

 

とまあ、偏西風蛇行の影響は続きそうですし、人間がお天道様をどうこうすることなどできませんので、せっかくなら気分よく過ごしましょう。心頭滅却すれば火もまた涼しといいますが、私はそれほど悟っちゃいませんので、おとなしく愚痴りながら本を読むことにします。

 

今日紹介するのは空えぐみさんの『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』(新潮社)です。現在連載中の漫画で、アニメ化が決まったこともありタイミング的にいいなと思い持ってきました。堅苦しい小説ばかり紹介すると思いました?…うちの本棚はそんなマジメなもんじゃないことはセックスの話し始めた時点で察してるでしょう?(#007参照。とはいえ、かさばっちゃうので漫画は売ってしまうか電子書籍で買うことが多いのですが)

 

まあ私と沖縄はちょっとした縁、というか私が沖縄料理大好きなんですね。タコライスも、てんぷらも、ダンキンドーナツも...(※米国企業)特にタコライスは大好物で、ごはん3合分くらいならペロッといけちゃいます。沖縄の食文化は栄養にとんだ食材が多く、海藻類や豚肉料理の文化も歴史的に豊かなんです。フルーツもおいしいですしね。それで惚れこんじゃって、沖縄のことはいろいろな歴史を勉強しちゃいました(もちろん、安全保障の問題も)

 

ま。それはさておき本作は、父親の転勤で突然東京から沖縄本島に引っ越してきた中村照秋くんが入学した沖縄の高校で慣れない文化に戸惑いながら生活していくストーリー。当然回りの高校生はうちなーぐち(沖縄の方言)混じりまくりで理解できず、クラスメイトも内地(本州)から来た見知らぬ生徒にはなかなか話しかけづらく、苦難な前途...かと思いきや、そこで話しかけてくれた女の子が喜屋武(きゃん)陽菜ちゃん。明るく活発で、日焼けがかわいいちょこんとした女の子が話しかけてくれて、だんだんとクラスに打ち解けることができていく...これはボーイミーツガールか...?と思いきや、喜屋武ちゃんから発せられるのはガチガチのうちなーぐち。中村くん、翻訳不能!!

 

しかし横から喜屋武ちゃんの言葉を翻訳して説明してくれたのが、大人しめな比嘉夏菜ちゃん(沖縄だと比嘉姓はバチクソ多いので、下の名前でかーなーと呼ばれてます。喜屋武ちゃんはひーなー)。比嘉さんは中村くんのことが気になってるんだけど、内気で話しかけられずにいたところを喜屋武ちゃんの翻訳をすることで中村君に話しかけるチャンスを手に入れます...!こんな感じですすんでいくのが本作。

 

本作の魅力はなんといってもこれでもかと詰め込まれた沖縄ネタの数々!それもそのはず、作者自身が沖縄に移住した体験談と、沖縄の人への取材がしっかりもとになっており、異文化ラブコメの見た目して地味に教養レベルが上がっていく作品です(あ、そんな堅苦しくないよ)。そしてネタはマジでディープであり、沖縄で暮らしたことがない人にとってはまさに予測不能な展開です(私も知らないネタがたくさんあって期待を良い意味で飛び越していきました)方言ネタだけじゃなく、

・沖縄には花粉症がない?

・台風前にみんなが借りるTSUTAYAのビデオ

沖縄県民は海で泳がない?

・「沖縄そば」が違法だった話

・戦争を生き残った「カンカラ三線

など、ラブコメ抜きで面白い話がたくさんあります。もちろんラブコメ要素も面白くて、文化の違いで思いを伝えられない中村くん、同じく伝えるのに難儀する比嘉さん、そしてうちなーぐちでさらにカオスに(無意識に)かき回す喜屋武ちゃんと、コメディタッチな要素もしっかり押さえてきます。個人的には比嘉さんをサポートしたりからかったりするトリックスターの安慶名(あげな)さんがかわいいと思う(←メインキャラより曲者のわき役とかモブキャラの方が好きなミノリちゃんの性癖)

 

そんなわけで既刊7巻の本作品、この暑い時期にいかがでしょうか。