藤花一拝乙夜覧

藤花みのりちゃんコレクションの本を語るこーなー

#007 アダム徳永『はじめてのスローセックス』

別にスケベな話がしたいわけではなく、性生活や性風俗に関するテーマの本を読むことは、面白い活動のひとつです。例えば、セックスワークの歴史を調べたり、結婚や恋愛の文化がセックスにどのような違いをもたらしているかについても調べました。しかし、やはりわたしが気になったのは「どんなセックスが一番気持ち良いのか?」という疑問でした。

やっぱり、スケベなのかもしれません。

(図書委員はむっつりスケベという風潮)

 

ただ、セックスのテクニックを紹介する文献を去年からずっと調べていたんですが、これが厄介でした。多くのセックステクニック本は雑誌のような、男性の性欲を煽り立てることが目的の物が多かった…とにかく多い。書いてあることもバラバラ。玉石混交どころか石しかないやんけ…本当に知りたいのはそこじゃない。そして、脚注がないから内容の検証もほとんどできませんでした。睡眠の仕方や食事の作り方ならいっぱい本があるのに、なんでセックスになるとまともな本が見つからないんですか…文明レベルが『カーマ・スートラ』から進んでないってマジですか?

 

ただ、調べてる途中にしくじり性教育をやってるVtuber由宇霧さんの本が出版されて、それを購入。この本は産婦人科の先生が監修してて、SF(セックス・フィクション)で膾炙してる俗説を否定してたり、男女両方の視点からセックスに取り組むことを考えてて、この二冊は日本のセックスに関する文献でも読む価値があると思う。語り口がへんな人だけど大丈夫。リンクを貼っとくのでマジメに推薦します。

 

 

 

 

 






で、その中でアダム徳永さんの「スローセックス」というものが女性にとって気持ちいいらしく、それについて調べることに。手に入る著作はほぼ購入したなか、もっとも簡潔にまとまっているのが本書。

 

1 現代のセックスの特徴は時間が短いことである。

2 その原因は忙しさとSFの誤った認識による男性の射精本位のセックスにある。

3 その結果、女性も十分に性感を得られず、そのことがセックスを苦痛で義務的なものにさせている。

 

というのが同書の認識。そして、セックスの誤った常識を覆すため、時間と射精をまず放棄することが必要であると述べている。そして、とにかくソフトに女性に触れて脳と性感帯の繋がりをつくるアダムタッチが重要なテクニックであるとされています。

 

このことはなかなか衝撃的な転回でした。女性にとっては当たり前だったかもしれないけど…射精の放棄を納得できたのは、実は理由があります。当時、うつ病の治療中だったわたしは、一時的な性的不能、要は立たないし射精できないという状態にありました(なんでそんなタイミングで調べてんだよと思われるだろう、わたしもそう思う)。しかし、なんとか性的欲求不満を解決したいわたしは、射精せずとも全身の愛撫が射精に比べてとても穏やかに気持ちがよいことに気がつきました。身体がぽかぽかして穏やかな気持ちになれたのです。同時に、射精は神経の問題で、要はアレへの刺激で自発的に出るものではない、コントロールできるものだということにも気づきました。

 

男性の射精を軸とするセックスは、女性にとってあまりにも短いようです。AVなどのSFからしか学ばなかった私たち子供のような男性には苦痛な話です。他に学ぶものがなかった昔なら仕方ないですが、わたしたちはAVはファンタジー、と割り切るべきだったのだろうと思います。「イクこと」を目的とするセックスから、「お互いに気持ちよくなる」ことを志向するセックスへの切り替え。それがアダム徳永さんのスローセックスの理論の一つです。

 

そして、「男性は女性のことに気を配る」「男性は謙虚に振る舞う」という幸せなセックスを送るうえでもっとも基礎的なことに十分に触れています。女性の幸せな温かさに満ち溢れるような本です。男性諸兄にはぜひ一度、読んでいただきたい本として、おすすめさせていただきます。